3/24(火) その1 『白い鳥』の街

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朝。火力の調整に四苦八苦した薪ストーブは、すっかり冷え切っていた。電源の供給も不安定なこの地域の宿は、申し訳程度の電球とロウソク、緊急用の充電式ランタンが灯りの頼りとなる。そんな心元ない電球では、例え点けていてもあまり足しにはならないので、既に陽が昇っているにも関わらず暗いままだ。

しかしながら、分厚いカーテンを捲ると、途端に陽光が差し込んできて清々しい。若干の肌寒さを感じつつ歯を磨いていると、窓の硝子を叩く音が聞こえてきた。目をやると、昨晩酔っ払っていた氏が「よっ」と手を振っている。外で同じように歯を磨いているようだ(宿はコテージ風で、ドアを出ると直ぐ外になる)。軽く会釈をして外へ出ると、「さっきワイフに電話してね、いやー!WBC日本勝ったよ!」と嬉しそうだ。(氏は、妻をワイフと呼ぶ)

それはよかったですね、と答える。無邪気に喜んでいる姿を見ると、こちらも喜ばしく思ってくる。たしか準決勝だったと記憶しているが、こうなったら優勝してほしいな、と思う。(その後の結果は、ご存知の通り日本が優勝して幕を閉じた)

氏は昨日のうちにブムタン地方を観光し終わっており、今日は直ぐに西へ戻るとのことだ。ぼくは今日見て回って、そのまま強行軍で西へ戻ります、と話す。夕方前にブムタンを去り、途中一泊して西へ戻る予定なのだ。では、と挨拶して別れる。朝食でまた会うかと思ったが、どうやら先に済ませていたらしく、朝食を摂り終える頃には出発していたようだった。



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朝食は相変わらずのメニューであるが、これまでとの違いがふたつあった。ひとつは、バナナパンケーキ(のようなもの)が出てきたこと、もうひとつは、ガイドのウゲンが辛いものを持ってきてくれるようになった。昨晩のエマ・ダツィをもりもり食べる姿を見て、現地メニュー(当然辛い)も大丈夫と思ったのだろう。親切だ。



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朝食を済ませたのちに一旦部屋に戻り、身支度。ガイドたちとの待ち合わせ場所である、入り口近くの駐車場へと向かう。ちょっと早めに着いたようだ。日向ぼっこしている猫に目をやる。犬は何処ででも目にはいるくらい沢山いるが、猫はさほど多くない…気がする。何故だろう。



ほどなくしてガイドの面々と合流、『ジャカル・ゾン』へ向けて出発した。通常は地名=ゾンの名前がセオリーだが、ジャカルについては、その名前になったのはゾン建設後の話で、その前は『チョコル』という地名だったらしい。何故ゾンはチョコルという名前を使わなかったのか、というと。その昔、ゾンの建築場所を探していた際に、白い鳥が小高い丘の上を旋回しており、それを吉兆としてゾンを建てたという言い伝えがある。そのため、地方の名前『チョコル』とは異なる『ジャカル=(白い鳥)』という名前のゾンになったということだ。

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その名前の所為か、一寸気高くも見える。…が、今日は日程の都合上、残念ながら中の見学ができない。ゾンは今も寺院の他に政府施設としても機能しているので、平日の日中は公務員が就業中のため、入ることができないらしい。ウォンデュ・ポダンでのゾン見学が印象的だっただけに少々残念だが、仕方ない。外観だけ遠めに眺めて通過した。



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続いてジャンパ・ラカンへと移動した。ジャンパ・ラカンは、西部パロのキチュ・ラカン(最終日に訪問した)と共に、ブータン最古の寺のひとつとされており、建立まで遡ると7世紀という長きに渡って、この地に佇んでいる。パドマ・サンバヴァがブータンに仏教をもたらしたのが8世紀で、これらの寺はその前から存在していたことになる。

では、何故ブータン仏教伝来の前に、これらふたつの寺が建立されたのか?というと、その昔、チベット建国の王ソンツェン・ガンポが魔物を封じるべくヒラヤ地域に108の寺を建立したという。そのうちの2つがブータンに存在するジャンパ・ラカンとキチュ・ラカンという訳だ。そのため、他の寺で見られるパドマ・サンバヴァではなく、ブッダ像が祀られている。入り口では、数人の老人が、繰り返し五体投地でお祈りを捧げていた。

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中庭に出ると、草を蓄え広々としていた。そこで住民集会のようなものも催されている。ぐるりと一周、マニ車を回しつつ入り口へと戻る。



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続いて、クジェ・ラカンへ。その昔、悪魔を退けるべくパドマ・サンバヴァが瞑想した洞穴があり、その際の背中の跡が壁に残っているとされる(クジェは、その跡を指す)。隣の堂にある別の洞穴では、罪がある者が入ると出てこれなくなるという言い伝えのものもあった。潜ってみたい、と申し出ると、「服が汚れるだけだから、止めておいた方がいいよ」とガイドのウゲンは言い、笑った。「ほら、穴の向こうがここから見えるよ。こっちからこう…続いているだけだよ」と。ああ、そういうものなのかと拍子抜けした。

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クジェ・ラカンの周りには、チョルテン(を模したもの)が壁の上にずらりと並んでいる。ひとつだけ青色に染められたものがあり、そこを基点に数えていくと全部で108個存在するらしい。奥の建物はお寺として機能しており、旅行者は立ち入り禁止となっており、外観だけ眺める。広い庭と背の高い建物が壁際に並んでいるその様は、学校のような印象も受ける。

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クジェ・ラカンを後にする際の門の足下。パイプが並んだ格子がはめられている。これは何かというと、牛が歩いてきて勝手に中に入るのを防ぐためのものだそうだ。牛の足は格子の隙間から踏み外してしまうので、中に入れない…らしい。ただ、見渡す限りは野良牛の類を見ることはなかった。



ここから、もうひとつ訪れる寺まで一寸ハイキングのように歩いていく。車から荷物を出して、てくてくと歩き出す。ここまででまだ午前中。昼前にも差し掛からない時間なのだからな…と、普段感じる時間の経過との違いを感じていた。

つづく
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by yoshi_nora | 2009-09-10 23:59 | 2009ブータン


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