8/8 エルジェイ滞在

昨夜のバーニャ効果からか、すっきりと目覚めのよい朝。一方お腹の方はあまり調子がよくないようだ。もうすっかり明るくなっているので、トイレにでも行ってこようかと小屋から出ると、ちょうどキッチンの小屋辺りで、ホーメイジふたりが羊を抱えて運んでいる姿が見えた。昨夜のご馳走の予定がちょっと遅れてしまい、今日羊料理を振舞ってくれると聞いている。ぼくは血の類が苦手な方だが、羊をさばく工程が気にもなる。どうしようかな、と考えたが、お腹の調子を優先してトイレ、用を足してちょっと休んでから羊の調理場へと向かっていった。



キッチン小屋の玄関横で、羊の解体は着々と進んでいた。手際が良いのでさくさくと捌いているように見えるが、これはなかなかの重労働のようだ。剥いだ皮をまな板代わりに使って細かい部位に分けていっている。解体の過程で出た細かい部位は、犬にあげていた。ここに住む犬ファミリーは人なつっこく可愛いが、時折与えられるおやつを心待ちに待っている姿を見ると、この時ばかりはやはり『獣』を感じる。

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おこぼれを待つ子どもたち。



そんな様子を眺めていると、その横で朝食用と思しきクレープを焼き始めていた。焼いたクレープをぱぱっと畳むと、「食べたい」と顔に書いてあるぼくに「はい」と一枚くれた。焼きたては柔らかさと甘みが更に増してておいしい。

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部位毎の解体作業に入ってくると、どれがどの肉か素人目には判断し難く同じ作業に見えてくる。ちょっと散歩してこよう。すぐ近くに昨日乗った白い馬が草を食んでいた。うふふ、と思って近づいていったが、「邪魔しないでよー」と、ちょっと迷惑そうにその場を立ち去ってしまった。

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川沿いの見晴台のある小屋に登って見回してみる。ここからキャンプを一望でき、背後にはエニセイ川。犬のじゃれ合ってる姿を眺めていたりしていると、ホーメイジたちがまな板の皮ごと羊の肉を担いでこちらに向かってきた。他所でやって、とでも言われたのだろうか(キッチンは他客と共同…)。

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その後、見晴台から解体ウォッチングの続き。頭が生々しい。解体が一通り終わって皆も起きてきた頃に、ちょうど朝食の時間となった。羊は昼に食するらしいので、朝食は控えめにしておこう…と思いつつ、非常に美味しいパンを頬張る。食後に飲むイワンチャイは、すっかり我々の人気者だ。

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朝食のあとは自由時間。実はバーニャがあったと聞き、知っていたらひとっ風呂浴びたかった。昨晩は小屋自体が既にバーニャだったけど。朝食後にバーニャの小屋を見に行き、そこから坂道を危なっかしく滑り降りてエニセイの川辺へ。とても静かな場所だ。水辺近くで座り、しばし川面を観察。近くを走るロシアン・ ジープの音だけが残念だ。(あとで知ったが、これは我々が乗るためのものだった)



エニセイ川で小一時間。石を投げて遊んだり、草花を観察したり。エルジェイのミハイルが手を振りながらモーターボートで横切って行く。わーい、と手を振って油断していると、ボートの横波が足下を襲う。わっ、と避けたり滑って転びそうになったり。こういった時間はとても楽しい。

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エルジェイ・キャンプの入り口から横に抜けると、今度は森の中。その先には岩山がそびえ立っており、自然の景観が豊富だ。山の頂上には十字架が建っていて、そこからの眺めは最高だと聞いた。昨日、迎えのボートでミハイルが指差していたのは、この十字架のことに違いない。数日前で山登りはお腹いっぱいなので、今回はトライしなかった。森の中で写真を撮ろうとした時にだけ、犬ファミリーの主と思しき大型の犬がふらりと現れ、一緒に写真を撮るとまたふらりと帰っていった。

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羊は鍋となり、ぐつぐつと煮込まれている。まだちょっと時間が掛かるようだ。それでは、と外に楽器を持ち出してしばらく遊ぶ。ムングンオールのこの黒いドシュプルールには、対となる兄弟が居る。同じように黒く塗られたイギルを弾かせてもらうと、これがとてもよく鳴る。ころころ鳴らしているうちに、羊料理が出来上がり、昼食の時間となった。

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今回の旅で、この兄弟は日本に移住した。



羊料理の昼食。ロシア正教から一気に遊牧民の流儀へ。ひとつひとつ、中には味にクセがあるものもあるが、美味しく頂いた。ただ、やはり量が沢山で、お腹の調子に気を使う身には食べきれない。もったいないという気持ちもありつつ、無理は禁物として遠慮しておく。一頭の羊への感謝の気持ちは忘れずに。

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昼食後、近辺を散歩。小屋の並ぶ場所の周囲をぐるりと一周してみる。カタカタカタ…と変わった羽音をたてて飛ぶ色鮮やかなバッタがわんさと跳ねており、踏まないように歩くことに気を使う。川を左手に臨んで暫く岩山の頂上を眺め、ぐるっと一周回って元の位置に戻って来た。

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今回の先生ホーメイジを写真撮影するとのことで、お手伝いの名目で川辺の船着き場に同行する。ウッペイさんの民族衣装は、何気にこの旅で初めて見たのではなかろうか。巻上さんが、各々そしてツーショットで撮影。ひと通り撮り終えて戻ったところに、我々と同じく体調を崩してしまっていたオトクンさんが民族衣装に着替えて外に出てきていた。間に合わなかったー!という素振り。そのまま、皆でしばし写真を撮り合う。

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襟を直してあげるセベックさんと、
なすがままのウッペイさんの図



ところで、このキャンプの主(かな?)。

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画になる男、ミハイル。
どう撮っても格好よくなる。見習いたい。



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その後、最後となるワークショップ。ウッペイさんは中でホーメイ、セベックさんは外でイギルを教える。ウッペイさんは冒頭で熱いメッセージを伝えてくれた。ホーメイジとしての自分と普段の生活、日本人に教えることになった今回の機会、歌い続けて良いホーメイジになってくださいというメッセージ。自分自身がロシア語に不自由なことが悔やまれるが、その熱い思いは身に余る嬉しさだ。その後、内外を行き来して練習やら、山と草原のカルグラの違い、ホス・カルグラの話など。セベックさんが、以前に音源で聴いてどうやっているのか皆目検討もつかなかったというテクニックが、実は手で手元を扇いでいるだけだったという話がツボらしく、「そんなの分かる訳ないよねー」と、何度もその話をしては笑っていた。



最後に、セベックさんウッペイさんから改めて最後のメッセージを頂いて終了。ムングン・タイガとバイ・タイガに住む、普段はなかなか会うこともできないというベテラン・ホーメイジたち。このひとたちと一緒に旅したということは、何事にも変え難い貴重な経験だった。この後、クズルに戻って明日にはもうトゥバを出国する、と思うと名残り惜しい(…って、旅程にはまだ日にちがあるが)。最後に、ウッペイさんにデモ演奏で披露してくれたドシュプルール弾き語りの歌詞も教えてくれないか、と無理を言ってお願いした。ウッペイさんは快く、「よし、じゃあ車に乗ったら書いてやるよ!」と答えてくれた。



部屋に戻ると、何故かきのこがみっつ。イタズラの犯人探しを試みるが、結局誰の仕業か分からなかった。キノコダンス。セベックさんが「こりゃあ虫食ってるなあ」といって傘をむしると、たしかに小さな虫が暮らしている。犯人さん、折角のきのこをごめんなさい、そっと山に返しておきました。



さて、そろそろ帰らなければならない。荷物を纏めて船着き場へ。来た時と同様に、まずは船で対岸に渡る。船着き場へ向かう途中でウッペイさん「アキラ、良いのが思い浮かんだんで、これを教えよう。日本の(歌詞)だ」、と。(実はぼくは、この時点では「日本の車の歌だ!」と完全にヒアリング間違っていて状況がよく判っていなかった)



来たときと同じように荷物を船に積み込んで、いざ対岸へ。対岸について、荷物を降ろしてからボートで立ち去るミハイルにありがとう、さようならと伝えると「いやいや、まだもう一往復するからね」。…先走り過ぎた。まだ全員渡りきっていなかったんだった。

ボートが最後の一往復を行っている間に、ウッペイさんが「アキラ、さっきの歌の歌詞を今書くよ」と。急いでノートを取って来るとセベックさんが「ん?なんだ?」と覗きに来る。「いや、これから歌詞をひとつ教えようと思ってね」とウッペイさん。するとセベックさんは無言でノートとペンを奪い取って、おもむろに自分が書き出した。「あ、あれー?」という感じで横で見守るウッペイさん。このふたりのキャラクターは、なんともおかしい。

セベックさんは、カルグラに関する歌詞を書いてくれた。ウッペイさんにも先ほどの歌詞を書いてもらう。それは、クズルで習ったイギル弾き語りの、自分ために書いてくれた追加の歌詞だった。「バイ・タイガの少年よ~」「アラッシュの少年よ~」という内容に続いて、「日本の少年よ~」という歌詞を加わえてくれた。うわー、これは何よりも大事な贈り物だ。



そんなことをしているうちに皆は車に乗り込んでおり、すみません!と、慌てて後を追う。ところで、ドシュプルール弾き語りの歌詞の件は、うまく伝わっていなかったようだ。素敵な贈り物で十分ではあるが、次はいつ会えるのか分からない、ここは厚かましくも、再度教えてくれまいかとお願いしたところ、「ああー、それね!じゃあそれは車の中で書いてあげよう」。ジープは復路クズルへ向けて出発した。当たり前だが、往路と同じく悪路が続く。椅子から落ちそうになるほど揺れる車中で、「あはは、駄目だ。揺れて書けないよー」とウッペイさん。欲張ってはいけない、まずは頂いた歌詞を大事にしようと思い直した。



行きはよいよい帰りはなんとやら。激しい悪路に身を揺られているうちに、太陽は沈んでいった。途中のトイレ休憩で空を見上げると、残された陽光で照らされるのみだ。もうじき暗くなるだろう。エルジェイを発つのは予定よりも大分遅くなった、何時くらいにクズルに戻るだろうか…と考えているうちに、悪路をものともせずドシュプルールを抱えたまま眠ってしまった。

暫くして目が覚めると、クズルの手前カー・ヘムに立ち寄っていた。復路には何故か同行者が増えており、キャンプの子だろうかロシア人の女の子が乗っていた。その子がカー・ヘムで降りるらしい。って、分乗したもう1台の姿は既に見えない。急いで後を追うように、車はクズルへと戻っていった。



クズルのホテル着。もう1台は先に到着していた。もう0時に差し掛かろうかという時間だ。気がついたら何も食べていない。メンバーの数名が味噌汁やカップ麺を持ってきているとのことで、お裾分けをいただいた。こういった準備もしておくべきと学ぶ。ホテル備え付けのウォーターサーバーの残り少ないお湯を皆でシェアしつつ、ささやかな夜食を準備した。その後、自分を含めて数名で夜食会の名目の下、まだ余っている手持ちのウォッカなどをあおる。一口お裾分けしてもらったカップ麺がおいしい。いつ振りだろうという蒲焼さん太郎を食する。硬い。お腹を満たしたところでお開き、ぐっすりと睡眠。
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by yoshi_nora | 2010-09-01 04:29 | 2010トゥバ


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